こんにちは、ウマたんです。

このAI時代にめちゃくちゃ稼いでる海外開発者にフォーカスするこのニュースレター。

今回紹介するのは「Timo Tzschetzsch氏」！

彼は、月に1万ドル（150万円）ほど稼ぐAIツールを運営している27歳のドイツ人。

そんな彼にフォーカスしてみていこう！

👨‍💻代理店業から個人開発の世界へ転身

Timo氏はバンコクに住むドイツ人。

彼は大学卒業後、普通に就職せず友人とEコマースの代理店をはじめる。

このビジネスは順調に伸び、ピーク時は月商5.5万ドル（800万円ほど）まで到達し従業員は8人ほどいたという。

しかし、代理店ビジネスは彼の人生を満たすことはなかった。

ほとんどがプロジェクトベースの案件で、毎月「もし新規クライアントが取れなかったらどうしよう？従業員の給料をどうやって払えばいいんだ？」という恐怖に駆られていたという。そんな恐怖に駆られながら忙しい日々を過ごすTimo氏。

とうとう彼は、「この状態から抜け出したい！」という思いから自分の持ち株を共同創業者に売却し、自分でプロダクトを作ることにした。会社を創業してから2年が経っていた。

これはめちゃくちゃ分かる。

単発のクライアントワークだけやるビジネスはサスティナブルではないし、時間の切り売りなので楽になることがない。

ここでシリコンバレーの大成功者ナヴァル氏の発言を取り上げておきたい。

彼は、「ビジネスのレバレッジの中で最も最悪なのは労働のレバレッジだ」と言う。

ビジネスのレバレッジには3つのタイプがある。

1つ目が労働。自分のために働いてくれる人を使って事業を拡大させていく。これは、太古から利用されてきたレバレッジであるが、現代においては最悪なレバレッジ。

人を動かすのはとんでもなく難しいし、統率力が必要。また、一つ間違えれば反乱を起こされてしまうこともある。

2つ目がカネ。これは20世紀で最も主流だったレバレッジ。カネを動かす人や企業が多くの資産を手に入れられる時代だった。人を動かすよりもカネを動かす方が圧倒的に簡単だ。

そして最後の3つ目が、費用をほぼかけずに複製できるプロダクト。

カネは管理が非常に簡単だが、いかんせん元手が必要。しかし、デジタル上のプロダクトはコストほぼ0で構築できる。そして人のように、わざわざ言う事を聞いてもらう必要もない。

コスト0で始められてかつ得られる収益は青天井である、現代最強のレバレッジなのである。

このプロダクトの定義は幅広く、コードで作られたプロダクトだけでなく、ブログメディアなども該当するのだ。ちなみにこのニュースレターも3つ目のレバレッジ。

「新世代の富は、メディアかコードによって生まれている」とナヴァル氏は言う。

さて、Timo氏がやっていた代理店業は、ほぼ100%労働力をレバレッジにしたビジネス。

これは、先ほどのナヴァル氏の言葉を借りれば、最悪の形態でサスティナブルではない。

それに比べて、個人開発者は100%コードをレバレッジにしている。最高の形。

ということで代理店業から個人開発業に転身したTimo氏の選択は正しかったと言える。

代理店ビジネスが100%ダメというわけではないが、事業を成長させていく上でどこかのタイミングでコードやメディアをレバレッジにした事業展開をしていく必要がある。

サイバーエージェントも代理店業をしながらメディアやゲームを作ってレバレッジを効かせている。これが代理店業だけであれば、あのスピードであそこまでの規模には到底ならなかっただろう。

📲WhatsApp上で動くAIチャットボットを構築

さて、彼が代理店業を辞めたのは2022年11月。

実に完璧なタイミングだった。なぜなら代理店業を辞めたその週にChatGPTがローンチされたのだから。まさに個人開発の波がどっと訪れるきっかけになったタイミングである。

さて、ChatGPTの登場と同時に誰もがChatGPTのAPIを利用した色んなAIアプリを作るようになる。そんな中、彼は友人とWhatsApp上で動くAIチャットボット「Jinni AI」をローンチ。

彼は代理店業からSaaSプロダクト開発の世界に移り、ビジネスモデルの秀逸さに驚いたという。

従業員はいないので「給料を払えなくなるかも」という心配は不要。そしてサブスクなので、新しい契約を獲得しなくても来月の収益がある程度確約されている。

やっと、不安の中働き続ける日々から解放されたのだ。

🧠新たなAIツールを開発

さてJinni AIで成功体験を得た彼だったが、これはただWhatsApp上でChatGPTをラップしただけのプロダクト。参入障壁は無いに等しかった。

そこで、彼は早急に別のプロダクトを立ち上げることにする。

どんなプロダクトがよいか考える中で、代理店業時代に苦労していた経験を思い出す。それは、クライアントのアポイント取り。

新しい案件を獲得しないといけないという焦燥感から、日々見込み客にアポ取りの電話をする日々を過ごしていた。

「このタスクをAIにやらせるのは需要がありそうだ」。

彼は直感的にそう思った。

しかし、彼はいきなりプロダクト作りをはじめず、まずは本当にプロダクトの需要があるのか確認することにした。

Webflowというノーコードツールを使いランディングページを構築。

SEOを狙ったキーワードを盛り込み「デモを予約する」というCTAボタンを設置。

これだけだ。すると、まだ存在しないソリューションに興味を持つ人々から、SEO経由でなんと30件以上の問い合わせがあったというのだ。

これで需要があるっぽいことが分かった。

しかし、真の需要があるかどうかはお金を払ってもらって初めて確認できる。

そこで、問い合わせのあった見込み客と電話し、まだ何のソリューションも存在しない状態で$500を送金するよう説得した。そして、最終的に1人の顧客から送金してもらうことに成功したのである。

以前紹介したGil氏も、プロダクトを完成させる前に事前販売して需要を確かめている。

このプロダクト開発前に需要を確認するアプローチは非常に効果的。

そうすることで、無駄に需要のないプロダクトに時間を割くのを避けることができる。

ちなみに、もし完成させることができなければもちろん返金するし、完成後のプロダクトに満足いかなければ返金するよ、というルールにするのがベター。

さて、Timo氏は確実な需要を確かめてから開発に着手しローンチ。

こうして出来上がったのが「SetterAI」

さてここからは「SetterAI」をどのようにして月1万ドルの収益に成長させていったのか？を見ていく。

実は、SetterAIは最初のアイデアからピボットをしながらここまで成長してきた。そんな彼の苦悩と共に集客方法について見ていきたい。

そして最後には彼の成功哲学を解剖して見ていきたい。

具体的には

• 自分起点でのアイデア創出
• ニッチであれ
• 成功事例を真似ろ
• Webflowで検証しろ
• TikTokに動画を10本あげて検証せよ
• AIで開発せよ
• 多面的なマーケティング

ぜひ最後まで見ていって欲しい。

🎯ピボットという苦渋の決断

実はSetterAIはローンチして早々ピボットを余儀なくされている。

元々は、電話でAIがアポイントメントを取るような音声AIのソリューションを提供していた。

しかし、音声AIの精度を上げるのが技術的に難しく、なかなかプロダクトの完成度を上げることが出来ずにいた。

また、そもそも電話でのアポイント取りとテキストベースのアポイント取りだったら、どちらかというとテキストベースでよいのでは？という議論も生まれた。

テキストベースであれば開発が圧倒的に楽だ。

ということでやむを得ず音声AIを断念し、テキストベースのアポイントメント取りにピボットするのだが、既にお金をもらっている顧客からの非難が届いた。

これは当たり前の反応である。彼らは音声でアポイントを取るという技術を魅力に感じてお金を払ったのである。

しかし、Timo氏はへこたれない。

Timo氏は、彼らに対してテキストベースのアポイントのほうが優れている理由を語り、彼らが本質的に何を求めているのか傾聴しプロダクトに取り入れていった。

新しい顧客が音声AIソリューションに興味を持っていたとしても、テキストベースの方が優れていると説得した。

このピボット時には既にある程度の顧客がついており、ピボットすることにより多くの顧客を失う可能性があったが、彼は断行した。

結果的に一度ほぼ0になった収益を改めて月1万ドルに回復させることができた。

人間はどうしてもサンクコストを考えてしまい、古い考えにしがみついてしまいがちだが、時には過去の資産を捨ててでもピボットを断行する必要がある。

🚀ピボット後のSetterAI

さて、簡単にピボット後にSetterAIがどんなプロダクトになったのか見ていこう！

これは、チャット上でユーザーにアポ取りをするAIエージェント。WhatsAppやFacebookメッセンジャーなど主要ツールで動く。

自分のGoogleカレンダーと連携して、自動的に空いている日程を先方に提示して、Gmailを送ってもらったらミーティングの予約をカレンダーに入れることができるというツール。

相手から反応がなければ、しばらく経って追いメッセージを送ることができる。

アポ取り特化のCRM×AIツールというわけだ。

価格は以下👇️

さらにプラスでエンタープライズ向けのカスタムプランが存在するようだ。

実際に彼自身が過去の代理店業で多くのディールをおこなっていた経験を活かして、多くの大型ディールをカスタムプラン経由で結んでいるとのこと。

ちなみにこのSetterAIでは無料プランが存在するのだが、個人開発において無料プランは廃止すべきという声も結構ある。

おそらくtoB向けであれば無料プランを用意してそこからリードを獲得してアップセル営業を仕掛ける作戦がワークするので、無料プランを設けるのはあり。

toC向けアプリであれば無料プランは設けずに無料トライアルにするか、もはや無料トライアルさえもないハードペイウォールにするのがセオリーな気がしてる。

しかし、これは全てアプリのテーマや規模・タイミングにもよるので一概には言えない。

やはり検証を続けて最適解を見つけていくのがよいと思う。

僕個人で展開してるプロダクトは基本全てtoC向けの低価格プロダクトなので、最終的に検証した結果、無料トライアル無しのハードペイウォールが最適解に落ち着いている。

💻️SEOをベースにした集客設計

さて、それではこのSetterAIがピボット後どのように集客してどうやって成長していったのか具体的に見ていこう。

実は、このSetterAIはSEOベースでの集客で成長していったという。

Ahrefsで調査したところ、

「ai appointment setters」

「ai appointment setting」

などめちゃくちゃ良いキーワードで1位と取っている。

検索ボリュームはそれほど多くないが、こういうキーワードを調べるユーザーはかなり購買意欲が高まっているのでCVRがめちゃくちゃ高いはず。

やはりニッチプロダクトを作ってロングテールSEOで手堅く集客するのはかなりありな戦略。

では、なぜSetterAIはここまでSEOが強いのか？

まずニッチなキーワード選定とそこに対するSEO最適化。

ちゃんとタイトルにツール名の「Setter AI」だけじゃなくて「AI Appointment Setter」というキーワードを入れている👇️当たり前な施策だが、かなり大事。

先ほど紹介した通り、「プロダクトを作る前にランディングページを作って、SEO経由で30件以上の問い合わせがあった」というのも納得できる。被リンク構築という最初のブーストあっての結果だと思う。

📹️長尺YouTubeによる集客

続いてのチャネルは長尺YouTube。

彼は2つのYouTubeチャンネルを持っている。

• Setter AI
• Timo Nikolai

1つ目は「Setter AI」のリード獲得のためのチャンネルでそれほど登録者数は多くないが、確実に興味のある見込み客層にリーチできている。

そして2つ目はTimo氏自身のブランディングチャンネルで、登録者数は1万人を超えており、動画もそこそこ再生されている。

彼のブランディングと共に「Setter AI」への集客にもなっている。

彼は「YouTubeはもう一つのSEOである」と語る。

結構見落とされがちだが、検索経由でYouTubeに訪問するケースは結構多い。

個人的にYouTubeの戦い方は大きく分けて2つあると思っている。一つはYouTube上のレコメンド経由で集客するYouTuberタイプ。

このタイプは爆発力はあるが、常に惹きの強いタイトルとサムネ、そして飽きさせないコンテンツを発信し続けなければならず持続性があまりない。

一方は検索経由で集客を狙うジワジワ事業者タイプ。

こっちのタイプは爆発力こそないが1回作ってしまえば、半永久的に検索から集客することができる。

昨今はGoogleの検索結果にYouTubeが表示されることもあり、意外と検索経由を狙ったYouTube展開は侮れない。

⚡️プロダクト別の集客チャンネルの違い

さて、こう見るとTimo氏の最初のプロダクトはTikTokでバイラルを生んで集客しているのに対して、SetterAIはSEOとYouTubeで集客をしている。

この違いはなにか？まさにプロダクトの特性である。

TikTokはtoC向けプロダクトの集客に強い。最初に構築したのは低価格で展開するtoC向けのWhatsApp上のAIチャットボット。

これは話題を作りやすく、バイラルになりやすく、TikTokでの展開に向いている。

一方でSetterAIは少数の法人に売れればよい、高価格toB向けプロダクト。TikTokだとバイラルになりにくく、おそらくSEOやYouTubeなどで検索してきたユーザーに売る方が効率が良い。

このようにプロダクトの特性によって強いチャネルは違うので、最初からチャネルを絞ってしまうのはもったいない。

とりあえず多面的に展開していくべきである。

✨️彼の成功哲学

さて、彼はプロダクトをどうやって作ってどうやって売るべきか、を以下のYouTube動画でまとめている👇️

繰り返しになる部分もあるが簡単にまとめていきたい。

自分起点でのアイデア創出

まず、アイデアはなるべく自分自身が悩んでいることや改善したいこと起点で生まれるべきだということ。

VCバックのスタートアップなどでない限り、なるべく自分起点もしくは自分に近い人起点で生むのが良い。

自分自身が顧客になるので提供するプロダクトの解像度が上がる。

そういう意味だと僕が今作っている「海外向けの日本語AIフラッシュカード」などは解像度が上がりにくく、難しい。熱狂的に使ってくれているユーザーの声を取り入れて改善に励んでいるところ。

ニッチであれ

そしてアイデアはニッチであるべきだということ。これもVCビジネスかどうかによって変わるが、それほど大きな規模のビジネスを求めない個人開発者であれば、よりニッチなテーマに絞るべきである。ニッチであればあるほど価格帯も上げることができる。

成功事例を真似ろ

完全にオリジナルなアイデアなど世の中には存在しない。自分が思いついたアイデアに近いことをやっている先駆者は必ずいる。

そんな彼らから学んで真似て、少し改善していくべきである。

成功しているプロダクトは2番手や3番手、はたまたそれ以降であることが多い。

Webflowで検証しろ

彼は、新しいアイデアを思いついたらWebflowで簡単なランディングページを作ってウェイティングリスト登録を集めるべきと語る。

実はLovableなどのAI開発ツールを使ってランディングページを作ってみたが、Webflowの方がSEOに強く集客しやすかったと語る。

確かにWebflowなど既存のテンプレートが用意されているノーコードプラットフォームの方が、SEOセオリーに従って構築されていて強そう。

これは新たな発見である。SEO集客を前提とするのであれば、AIで作るのではなくて既存のノーコードツールでランディングページを作った方がよいかもしれない。

TikTokに動画を10本あげて検証せよ

彼のように強いサイトからの被リンクを貼ることができればSEO×ランディングページでもワークするかもしれないが、そうとは限らない。

そんな時におすすめなのがやはりTikTokを筆頭とするショート動画プラットフォーム。

彼は、プロダクトに関連するショート動画をとりあえず10本作ってアップしてみることをオススメしている。

これでアイデアに需要があるかはある程度判断できる。

AIで開発せよ

先ほどランディングページはWebflowで作っているとお伝えしたが、彼はその後のプロダクト構築にはやはりゴリゴリAIを使っているとのこと。

まず0からLovableを使って作り上げ、その後の細かい調整はCursorエディタで行うという。

今どきの開発だ。

多面的なマーケティング

とりあえず全部やれってこと。

彼の場合はSEOとYouTubeがメインだがProduct Huntのようなローンチプラットフォームにローンチするのも大事だし、Building in Publicで開発過程を共有するのも大事、B2Bならコールドメールも大事だし、やはりショート動画も大事。

どれが本当にワークするか分からないのでとりあえず全部試すべし！

ということで、この成功哲学に従ってプロダクトを展開し、Timo氏は月1万ドルの収益を超えることに成功したのだ。

📝まとめ

ここまでTimo氏のストーリーについて見てきたが、非常に堅実なアプローチで成長させてきたことが分かる。

なんと言っても、見かけ上は上手くいっていた代理店ビジネスに違和感を感じ抜け出しことが一番の転機。

そして、そこから最初の成功体験にしがみつくことなく、他のツールを作りピボットをしながら成長させてきた。

彼の成功哲学を改めてまとめると以下。

• 自分起点のアイデア：自身の課題や近い人の課題から発想すること
• ニッチを狙え：ニッチな市場を狙って高単価設定をせよ
• 成功事例を真似る：オリジナルなアイデアなどない。先人の事例から学べ
• 需要検証：WebflowでLP＋SEO、事前販売で本気度を確認せよ
• 多面的マーケティング：SEO、YouTube、Product Hunt、Building in Public、ショート動画などを全て試せ

これからの世の中は、コードやメディアという第3のレバレッジを使うのが大事。

また彼はAIの登場によりVCマネーが本当に不要になっていると語る。

2週間サンフランシスコに滞在し、VCマネーを求めている人が急速に減っていると感じたという。

あるスタートアップ向けのイベントでは、資金調達先を探している人の挙手を求める質問に50%ほどの手しか上がらなかった。VCスタートアップど真ん中のサンフランシスコのスタートアップイベントで50%しか手が挙がらないのは異様な世界だと語る。

やはり世界は、資金調達をせず個人開発・ソロプレナーで戦う時代に差し掛かっている。

今回は「Timo Tzschetzsch氏」にフォーカスしてきました。

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それではまた来週月曜日に会いましょう！

参考文献

https://x.com/timonikolai

https://www.indiehackers.com/post/tech/growing-a-web-monitoring-tool-to-1m-arr-by-building-in-public-X876kKI7Olsf4YBI8FWb

https://www.youtube.com/watch?v=HR4oBF0EG-Y

https://www.timonikolai.com/

https://www.linkedin.com/in/timotzschetzsch/