海外個人開発者にフォーカスするこのニュースレター。

今回紹介するのは「Julien Nahum（ジュリアン・ナーム）」氏！

彼は28歳ながら月37kドル（550万円）もの収益を稼ぐ個人開発者。

元々AWSのソフトウェアエンジニアだったのだが、そのキャリアを捨てて個人開発の世界に飛び込んだ。

そんな彼にフォーカスして見ていこう。

🖥️AWSのソフトウェアエンジニアを辞めて個人開発の世界へ

彼はフランス生まれ。生粋のエンジニアで数々の企業でソフトウェアエンジニアとして働いてきた。

独立する前の最後のキャリアはAWSのソフトウェアエンジニア。だいぶ高給取りだったことが想定される。

しかし、彼はそんなキャリアを捨てて個人開発の世界に飛び込んだのだ。

実は彼はフルタイムの仕事をしながらも、これまでにもいくつかのオンラインビジネスを立ち上げてきた。

それらの経験から、いつかはフルタイムの仕事を辞めて思いっきり自分のビジネスにリソースを割きたいと思うようになっていったという。

そんなことを思いながらAWSでソフトウェアエンジニアとして働く日々。

きっかけは突如としてやってきた。

当時彼は彼女と一緒にロンドンで暮らしていた。そんな中彼女がフランスにて良い仕事を見つけるのだ。フランスと言えばJulien氏の故郷。

またそれと同時期に、彼が今まで1年間ほどかけて従事してきたプロジェクトを他の人に引き継ぎ、自分は別のチームに移らなくてはいけなくなった。

この2つの出来事から、彼は会社を辞めて故郷のフランスに戻り個人開発者として勝負することに決める。

📒Notionと連携したフォームプロダクト「NoteForms」

不安がなかったかと言えば嘘になるが、彼は学生時代にフリーランスとして働いた経験もあるしAmazonでソフトウェアエンジニアとして働いた経験もあるし、お金が必要になればいくらでも食い扶持は見つかるという自信があった。

またそこそこ貯金もあったため、しばらくは自分のプロダクトを作ることだけに集中できた。

起業や独立をする人はリスクテイカーで勇気が非常にあると思われがちだが、そんなことはない。

ほとんどの成功者は彼のように必ずセーフティーネットをひいていて、失敗しないような土台を作ってから挑戦するのだ。

ということで彼はとにかく様々なプロダクトを作り始める。

しかし、いくつかのプロダクトを公開するもなかなか良い反応を得ることができない日々が続く。

そんな中2021年にNotionがAPIを公開。

彼はNotionを愛用していたのでNotionのAPIを使って何か作れないかと考えた。

こうして生み出されたのが、「

NoteFormsはNotionのデータベースと連携したフォーム作成サービス。

アンケートや予約を受け付けるフォームを誰でも簡単に作成でき、それがNotionにデータベースとして蓄積される仕様になっている。

彼はこのプロダクトを数日で構築しMVPを公開した。

自信満々でTwitterに投稿するも付いたいいねは、たったの6個。

彼はマーケティングをなめていた。誰もが通る道ではあるが、彼は良いプロダクトさえ作れば売れると思っていたのだ。

しかしいくらプロダクトが良くても売る努力をしなければ製品が売れるわけはない。

ここから彼の必死の顧客集めがはじまる。

🙆必死のマーケティング活動で徐々に顧客を獲得する

まず有名な掲示板プラットフォーム「Reddit」にてスレッドを立ち上げて製品の紹介をした。

この投稿きっかけで1週間で20人のユーザーを獲得することに成功する。

また、この投稿は現在もGoogle検索で「create a form with notion」と検索した時の上位に入っていて、継続的にユーザーを連れてきてくれるらしい。

RedditはSEOにもかなり強いので、自分のプロダクトに関連するキーワードのスレッドを立ち上げてRedditを通したSEOでユーザーを集めるのは案外アリな戦略だなーと感じた。

そして、2ヶ月後今度は他のユーザーがRedditにNoteFormsに関する投稿をしそれがバイラルを生み多くのユーザーを連れてくることになる。

やはり、開発者本人が宣伝的に行う投稿よりも第三者が自然発生的に行う投稿の方がウケが良い。

続いて、彼はフェイスブックに存在するNotionに関するグループに参加し、自分のプロダクトの宣伝をおこなった。

これまで紹介してきた開発者でFacebookを通した営業活動をおこなっている人はほとんどいなかったかと思うが、このアプローチは非常に有効な手段だなと思った。

そしてTwitterでは自分の開発過程を公開しながら、Notion関連のツールを作っている有名人に積極的に絡みにいったという。

プロダクトをローンチしてユーザーを見つけるためには、まずどこにユーザーがいるのかを把握する必要がある。

彼の場合はNotionに関連するプロダクトを作ったので、比較的それが簡単だった。

Notionに関する情報が集まっている場所・コミュニティに入っていけばよかったのだ。

以前Zendeskのプラグインを開発している開発者を紹介したが、このように既に出来上がっているプラットフォームに関連するプロダクトを作るのは完全に独立したプロダクトを作るよりも最初の顧客獲得に苦労せずに済むケースが多い。

⚡️製品の継続的な改善活動と有料化

彼は前述のマーケティング活動をしながら、製品の改善を続けた。

顧客からの機能追加リクエストをもらうと、まずそれが自分のビジョンと合っているかを確かめて、合っている場合は機能として追加した。

ビジョンとズレている場合は、なぜその機能を追加しないのかを丁寧に顧客に説明したという。

こうして順調に顧客を獲得してきた彼だったが、ローンチから1ヶ月経ってもプロダクトはまだ全て無料だった。

彼はローンチから1ヶ月経ち、多くの機能を追加しバグもなくなり安定してきたことで、そろそろ有料にしてもいいのではないか？と思い始める。

そこで競合製品の価格を調べた上で、それらの平均価格を2で割った15ドルで売り出すことにするのだ。

既存の無料ユーザーに配慮するために、生涯40%引きになるクーポンを発行し有料顧客への転換を促した。

本当に自分のプロダクトにお金を払ってくれる人がいるのか不安だったと彼は語るが、ちゃんと無料ユーザーの一部が有料プランを登録してくれた。

こうして初めての有料顧客を獲得することに成功するのだ。

この後も彼は顧客獲得のために様々な施策を打つ。

たとえば、有料プランを3日間だけ無料で使えるようにした。さらに無料ユーザーが初めてフォームを作成すると、サポートチャット経由で1ヶ月目の有料プランを40%引きするクーポンが送付されるような仕組みを作った。

🔗自然と拡散される仕組みをプロダクトに取り入れている

さらにこのNoteFormsには無料ユーザーがプロダクトを拡散してくれる仕組みが搭載されている。

無料ユーザーがNoteFormsでフォームを作成すると、そのフォームにはPowered by NoteFormsという文字が付くようになっている。

そしてそこからNoteFormsへのリンクが貼られる。

この仕組みにより、無料ユーザーの作成したフォームは多くの他の人の目に触れることになる。

さらに、これにより自然と被リンクが集まるためSEO的にも非常に良い効果があるのだ。

また、彼はプロダクトをローンチしてから6ヶ月後にProductHuntに改めて投稿することに決めた。

実はプロダクトローンチ直後にProductHuntに投稿したものの当時は良い反応を得ることができなかったのだ。

しかし、6ヶ月経ちプロダクトにはたくさんの機能が付きユーザーも付いている。Twitterのフォロワーも増え死角なし。

彼は、ProductHuntでの成功を手にするために、ProductHuntの会員でもありNotionのコミュニティを運営する人に連絡し協力を仰いだ。

また友人にも自分のプロダクトに投票してくれるように依頼した。

そうして満を持してプロダクトをローンチし何とDailyで1位を獲得することに成功したのだ。

ProductHuntには最初のプロダクトローンチのみ投稿できると考えている人が多いが、実は同じプロダクトでも大幅なバージョンアップがあった場合など何回でも投稿できる。

最初のユーザーが付いていない時期よりも、ある程度ユーザーが付いてから投稿した方が良い結果を得やすいため、ローンチ初期だけでなくローンチからしばらく経ってからもProductHuntに投稿するべきなのである。

なるべくProductHuntに定期的に投稿していこう！

こうして彼は、この後もマーケティングと機能追加・プラン追加などを繰り返しプロダクトを順調に成長させてきた。

途中で他の人にプロダクトを模倣されてユーザーを取られそうになったこともあったそう。

しかし、表面上の機能を模倣できても、彼のユーザーに向き合う姿勢やビジョンを模倣することはできなかった。