海外個人開発者にフォーカスするこのニュースレター。

今回紹介するのは「Sorin Alupoaie(ソリン・アールポアイエ)」氏！

スタートアップの世界に足を踏み入れ、あまりにも成長を急ぎすぎたため失敗し、自己資金でじっくり収益を求めるインディーハッキングの世界に転じて28kドル(420万円)を達成した男。

そんな彼にフォーカスして見ていこう！

👨‍💻ソフトウェアエンジニアとして10年以上の経験を積むが嫌気が差して独立

彼はキャリアの最初から10年以上もの期間をソフトウェアエンジニアとして歩んできた生粋のエンジニア。

キャリアの後半は、DellやIBMで大企業向けのソフトウェアの開発に時間を費やした。

しかし、その時期に構築したソフトウェアは現場ではほとんど使われなかったという。

というのも、大企業では結局役職の高い人間がコネや人脈を通じてソフトウェアを契約しそれを現場に押し付ける構造になっている。

現場では全く使われていない無駄なソフトウェアが蔓延ることになる。

しかしソフトウェアを導入したこと自体が実績になったりもするので、様々な企業が現場のことを考えずに高額なソフトウェアを導入してしまう。

ソフトウェアを開発するベンダーも導入さえできてしまえばいいので、エンドユーザーのことを真剣に考えた機能開発をしなくなってしまう。

こうしてデジタルトランスフォーメーションが結局進まない。

これは大企業で頻繁に起きている課題である。

Sorin氏は、その現状に呆れて自分でビジネスを立ち上げることにした。

🌃スタートアップの世界にフルコミットして失敗を経験する

こうして彼は「Cx MOMENTS」というプロダクトを開発した。

これはAIを使ってカスタマーサポートの業務を最適化するというものだったらしい。

AIがカスタマーからの問い合わせを分析して回答の下書きを生成してくれるようなもの。

チャットボットとは違うようだが、カスタマーサポートの業務を効率化して最適化するプロダクト。

彼はこのプロダクトのプロトタイプを2016年に開発し、早速数人の顧客獲得に成功した。

顧客獲得に成功し"これはイケる"と思った彼はフルタイムの仕事をやめて完全にプロダクト開発に飛び込むことにする。

しかし当時貯金がなかったため、自分の生活のために資金調達を余儀なくされる。

しかし、それにより急速な成長を求められることになる。彼はこの急速な成長に耐えられず4年後にこのプロダクトをScorebuddyという企業に売却することになる。

具体的なディールは明らかではないが、その後しっかり売却先の企業にジョインしてフルタイムで働いて1年分の貯金を貯めたと述べているのでM&Aによる収益はほとんどなかったことが想像される。

売却金額がそこまでの金額ではなかったのか、初期の資金調達時に自分の株式をほとんど手放してしまって希薄化していたのかもしれない。

彼は巨額の資金調達をしてIPOかM&Aを目指すスタートアップの世界もいいけれど、急速な成長を求められすぎて自滅してしまう会社が多いと語る。

資金調達が必要ないのであれば、出来るだけせずに自己資金で持続的な成長を求める方がよいと語る。

🚀フルタイムで貯金をして今度は自己資金でプロダクトをスケールさせる

彼は以前の失敗を活かして、今度はフルタイムでしっかり貯金をして資金調達が必要ない状態で挑戦することにする。

2020年12月に売却先のScorebuddyという会社にジョインしてから約1年後の2022年1月に「

」というプロダクトを開発するのだ。

このプロダクト、フルタイムを続けながらたった2週間ほどで開発したという。

」という世界中で展開されるカスタマーサポートプラットフォームのプロダクトの拡張機能。

以前、彼が資金調達をして失敗した「Cx MOMENTS」もカスタマーサポートプラットフォームだったので、この挑戦は前回の失敗とそこから得た知見をベースにした再出発と言える。

前回と比較して今回はすでに大きなプラットフォームになっている

に乗っかる形でのプロダクト展開なので、手堅く顧客を惹きつけることができた。

個人開発には最適なアプローチだと思う。

には様々な機能を持ったアプリがあり、それらを使うことでユーザーからの重複リクエストをマージしたりAIを使ってリクエストの自動分類をしたりできるようだ。

Zendesk側の仕様変更に左右されるのでリスクはあるが、それでも最初からZendeskを使うユーザーにアプローチできるので収益をあげやすい構造であると思う。

💰️プロダクトローンチから1年後に月5kドル(75万円)を超える

彼は、プロダクトローンチ後もScorebuddyでフルタイムで働き続けていた。

前回の失敗を活かしてすぐには会社を辞めることはしなかったのだ。

そんな甲斐もあって、じっくり顧客に向き合い収益を伸ばすことに成功した。

なんと1年後に月の収益が5kドル(75万円)を超えるのである。

彼はここまでの軌跡でやってきたことを以下のブログ記事にまとめている。

彼がここまででやってきたことは以下である。

様々な小さなアプリを開発しZendeskに公開

Zendesk上には様々な拡張アプリが存在する。

彼はZendesk上でのプレゼンスをあげるために様々な小さい無料アプリを公開した。

まずは、たくさんの無料アプリでサインアップを求めて、そこから有料アプリにアップセルさせる作戦だ。

なんと1年間で9つのアプリを公開したという。そして、そのほとんどは1週間以内に公開したもの。

彼は、UI・機能は必要最低限のものにすることを推奨している。

無料アプリをたくさん作ってそこから有料アプリへアップセルさせる作戦は、既存プラットフォームの拡張機能やプラグインを開発する場合は非常に有効なアプローチになりそうだ。

彼はZendeskのコミュニティフォーラムの全ての投稿とコメントに目を通しているという。

また積極的に自分が回答できるものがあれば回答しているという。

さらに既存顧客とコミュニケーションを取り、常にどのような課題を持っているかを把握しているという。

このような顧客の声を徹底的に聞く姿勢がプロダクトのスケールにつながっているのだ。

外注できる部分は積極的にする

最初は全て自分でやっていた彼自身だったが、自分の苦手な部分は外注に頼むようにした。

彼の専門はバックエンド。そのためフロントエンドを外注しはじめた。またブログ投稿などのコンテンツマーケティングも彼は得意でないため、外注しはじめた。

これにより彼は自分が本当にやるべきことにフォーカスできるようになり、収益をしっかり伸ばすことに成功した。

最初から外注は難しいかもしれないが、ある程度収益の目処が経ってきたら自分がやらなくていいこと・自分が苦手とするところは積極的に外注していこう。

💰️プロダクトローンチから約2年半後に月20kドル(300万円)を超える

彼の勢いはとどまらなかった。月5kドルを超えてから約2年半後に20kドルを超えるのだ。

その話は以下のブログ記事にまとまっている。

順調にプロダクトをスケールさせてきた彼だったが、もう少しこうしていればよかったという点もいくつか挙げていて参考になる。

マーケティングをはじめるのに時間をかけすぎた

彼は最初はプロダクト開発だけにフォーカスしていてマーケティングに力を入れていなかった。

他の開発者のストーリーにも必ず登場するのがマーケティングの重要性。

彼の場合も途中でマーケティングの重要性に気付き、専門家を雇ってのコンテンツマーケティングを実施している。

本来であれば最初からマーケティングを行うべきだったと語る。

ランディングページが微妙だった

ローンチから6ヶ月後にランディングページを改善したところ、大幅にCVRが改善したらしい。

ランディングページはプロダクトの顔である。

常に改善できるポイントはないか検証して改善していこう！

ただその際にABテストをすることが重要。僕自身改善したつもりが逆にCVRを下げてしまった過去がある。

改善と検証はセットで必要なのである。

には様々な拡張機能が存在していて、それぞれに価格が付いている（完全無料のものもある）。

しかし、彼は価格を安くしすぎたと語る。

ものによっては現在の価格の10分の1でスタートしたものもあるというから驚きだ。

確かにプライシングはビジネスにおいて最も難しい要素の一つだ。

Zendeskのアプリでそんなに儲かるなんて知りませんでした

やっぱり１年以内に月に５０００ドルぐらいにはしておかないとダメですね。私ももっとやらねばーと刺激を受けました

ウマたんさんのニュースレターは本当に楽しみにしてます！！

ですよねー！Zendesk内アプリでそこまでいくとは驚きです。
彼のストーリーを見て既に出来上がってるプラットフォームに乗っかる開発は手堅いなーと思いました！
いつもありがとうございます！